良い人生を送るために重要なことと教育について

良い人生とは何か。

ある人の人生は、他の人よりもある面では高度かもしれないが、幸福感、目的意識、心理的な豊かさは、それぞれ良い人生を構成する一つの要素あるいは側面を示しており、一つの要素だけで独立したタイプの人生にはならない

 

一般に

幸福感を重視する人は、安定性やポジティブなマインドセットに価値を置く

目的を重視する人は、強い道徳心を持つ

心理的な豊かさを重視する人は、好奇心や自発性に価値を置く、という傾向がある。

 

その他にも、創造性、知的好奇心、他者への思いやりなど、他のさまざまな側面があり、それらを考慮する必要がある。

 

ここで、最も重要なことは、

自分が何者であり、何に価値を置いているのかを見極める自己認識力を身につけること。

何に価値を置いているか知ることで、一人一人にとって良い人生とは何かを定義することができる。

 

引用元

心理学者が提唱。「いい人生」を送りたいなら考えておきたいたった1つのこと(ライフハッカー[日本版]) - Yahoo!ニュース

 

・・・・

 

子どもを育てていく上で、教育者は「どのような子どもを育てていくべきか」「どのような子どもが理想的な”良い子ども”なのか」を考える。

 

以前は、いじめや暴力、喫煙飲酒など、"問題行動のない子ども"が、いわゆる良い子として捉えられてきた。

 

今は違う。

(日本では知・徳・体の調和のとれた子どもを育成することになっているが)

 

5C研究で、良い発達を示す子どもの特徴が5つの要素からなると明らかにされ..始めた。

 

5Cを(すべて)高めることで、子どもがより良い発達を示す。

 

では、5Cは決まったとして、それらが何によって高まるのか。

さまざまな個人要因、環境要因、行動(による経験)が影響してくる(バンデューラ。)

 

どのような個人要因を持ち、環境要因を持たせ、経験をさせるのか。

これによって、子どもたちの5Cの育ち方は異なるのだろう。

 

ここに5Cを研究することの意義がある。

 

"どのようなコト・モノまたは経験によって、良い子が育まれるのか。"

良い子が一つの要素で定義できないように、それは一人一人異なり、

発達段階、レディネスの影響も考慮しなければならない。

これは、研究が進むことで少しずつ明らかになっていくのだと思う。

 

 

さて、

5Cは後天的に伸ばすことのできる資質である。

通知表で、または教師からその場その場で、

勉強の出来、スポーツの出来、人格の出来を評価されることよりも

 

「今の自分は、何を頑張っているのか」

「自分の良さや強みは何か」

より良い自分になるために

「どのようなところを伸ばしていけばいいのか」

 

そうしたことを評価することが大切である。

通知表(のようなもの)を通して、こうした自己の確認をする作業を

教師や親のような大人がサポートできると良いのだろう。

 

このように、5Cは、自分自身のことや現状を理解するための道具として

これからの子どものコンパスとして、活用することができるように思われる。

(教育者のコンパスにもなるということである。)

 

・・・・

 

メモ。

 

子どもにとっての良い人生とは何か。

人生において自分が何に価値を置いているのかを見極めることが重要なのであれば、

「子ども一人一人が何に価値を置いているのか」を見極めることが重要になるのだろう。

 

子どもの頑張っていることは何か、主体的に取り組んでいることは何か。

ここに意義があり、これを評価する。

 

さらに、5C研究から

子ども自身が「自分の強みは何か」を認識することは重要であるため

子どもの姿から、強みを引き出し、認めることがポイントとなる。

 

これは、自分とは何か(アイデンティティ統合へ向けて)の理解へつながる。

 

以上のことから

自己理解のための支援は、子ども自身のwell-being=良い人生を送ること

を実現させる上で重要であり、

子どもの姿から5Cを引き出し、認めることが教育者に求められるのではないだろうか。

 

終わり。

 

 

メモのメモ。言葉を借りて

 

ある子どもは、他の子どもよりもある面では出来が良いかもしれないが、

文が読める、計算ができる、早く走れる、絵が描ける、お手伝いをする・・・

それぞれは”良い子”を構成する一つの要素あるいは側面を示しており、

一つの要素だけで独立したタイプの子どもにはならない。当然多面的。

 

重要なのは、

子ども一人一人が、何に価値を置いているのか

どのようなことを頑張っていて、どのようなことを考えているのか

それを子ども自身が理解していること、

もしくは

そのことについて大人が正対して評価し、サポートすること

が重要なのかもしれない。

 

それとなく人を動かすナッジというもの

ナッジについて。

セイラー教授が2017年にナッジ・行動経済学関連でノーベル経済学賞を受賞しました。

 

はじめにーナッジの重要性(前回の続き)

行動科学は,人間行動の普遍性に関する知識を集積し,その考え方を理論化してきた。

しかし近年の行動経済学の考え方によれば,私たちはけっして「合理的な人間」ではなく,認知バイアスから不合理な意思決定をして,理屈通りに行動しない

そこで,行動変容に対する個人の意思決定が時として,合理的に行われない場合があることを前提に, ちょっとした “ 工夫 ” と “ 仕組み ” で,個人がより良い選択をできるように支援する「ナッジ」(nudge) という行動経済学の政策アプローチが注目されている。

ナッジとは,軽く肘でつつく,押すという英語の意味だが,まさしく個人の行動を強制することなく,人が取る行動について複数の選択肢がある場合,社会や自分にとってより望ましい選択肢を本人が意識できるような仕掛けを導入する方法である。

英国や米国では,政府主導によるナッジの政策的取り組みが普及しており,小児肥満の改善や低所得者層における受診率向上などの医療問題の解決に役立っている。

わが国でも最近,ナッジを活用して,生涯現役社会の実現に向けた予防・健康に向けた誘因(incentive)(生活習慣病対策の強化や認知症予防に向けた国民キャンペーン,企業の健康投資の拡大) や社会的・公共的な意識・態度を喚起する態度変容型の計画などの政策形成が始まりつつある。

国や自治体など大規模なレベルでのナッジの展開は,行動変容を促す健康教育・保健指導のためのソーシャルマーケティングの考え方を取り入れながら,コミュニティ組織化(community organization)への社会活動(エンパワーメント, アドボカシー,マスメディア・コミュニケーション) へとさらに発展していくことが期待されている。

 

ナッジとは、行動科学の知見(行動インサイト)の活用により、「人々が自分自身にとってより良い選択を自発的に取れるように手助けする政策手法」である。

人々が選択し、意思決定する際の環境をデザインし、それにより行動をもデザインする。

欧米をはじめ世界の200を超える組織が、あらゆる政策領域(SDGs & Beyond)に行動インサイトを活用している。
• 国内では、2018年に初めて成長戦略や骨太方針にナッジの活用を環境省事業とともに位置付けた(2019年の成長戦略、骨太方針、統合イノベ戦略、AI戦略等にも位置付け)

 

選択の自由を残し、費用対効果の高いことを特徴とする。 

この点(選択の自由は残す=規制・強制ではないところ)が、自由の国アメリカ等で受け入れられた理由の1つとされている(環境省資料から)

 

ナッジには2つの種類がある。

・特定の目的を達成したいという気持ちを持っている人の行動を促すもの

・そのような理想的な目的を持っていない人に理想を持たせて行動させるもの

前者は比較的、計画に関する介入の妥当性が説明しやすい

後者は倫理的な配慮の検討をより必要とする

 

良いナッジとは、自分自身にとってより良い選択ができるように人々を手助けするもの。

一方で、賢い意思決定や向社会的行動を難しくするような悪いナッジをスラッジと言う。

 

ナッジについて、多くはまだ実証実験の段階であり、その効果を明らかにした上で施策にまで落とし込んでいる事例は多くない。

人々にどのようなナッジを与えるか。ナッジの評価は人々を助けるか損害を与えるかという効果に左右される。

市民にとって良いのか、社会にとって良いのか、それが両立できないときは何を優先すべきか、何をもって良い悪いとすべきか・・・

効果をきちんと評価し、エビデンスに基づく計画を立案して透明性を高め、説明責任を果たすことが重要である。

 

したがって、ナッジの活用に携わる人は、法令の定めるところに加え、高い倫理性が求められる。

 

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選択アーキテクチャーとは

人々が選択する際の「環境」のこと。

「自発的な意思決定のための環境をどうデザインするか」をテーマとする。

人が意思決定し、選択する際の「環境」をデザインし、それにより「行動」をデザインする。 

 

はじめにー選択アーキテクチャーの必要性

人間の間違った行動や考え方のクセが、生活の質を落としてしまっている。

バイアス、惰性、楽観性、損失回避性、不注意、受け身、周囲に同調、という性質があるため、判断が難しいもの、未経験のもの、すぐにフィードバックが得られないもの(選択の結果が遅れて現れるもの)に関しては、ナッジが役に立つ。

そして、判断を下さなければならない時や、選択が強いられる様々な場面で、良い結果を得るようにするために、良い選択アーキテクチャーを設計する必要がある。

 

良い選択アーキテクチャーの原則は6つ。

①iNcentives (インセンティブ)

 行動の傾向や原因を分析し、偏っていたら修正してくれる。

②Understand mappings (マッピングを理解する)

 ある情報を、自分の知っている情報に置き換えて理解することにより、納得のいく商品やサービスを受けられる。情報が開示されていることが大切。

③Defaults (デフォルト)

 選択肢が、あらかじめ、標準として用意されていて、選択の労力、抵抗力が少なくて済むようにする。

④Give feedback (フィードバックを与える)

 操作が正しいか、ミスしているか、伝えてくれる。

⑤Expect error (エラーを予期する)

 エラーしたら、警告サインやアラームで知らせてくれる。

⑥Structure complex choices (複雑な選択を体系化する)

 利用状況や傾向に合った商品やサービスを勧めてくれる。

 

例えば、アメリカにおいて、

退職準備の年金プランの改善すべきところとは、

インセンティブ:企業は従業員にとって最大の利益になるよう行動する義務を法制定する。運用資産の管理について専門家の助けが得られるようにする。

マッピングと、④フィードバック:退職貯蓄の目標達成状況を視覚的に表示する。

③デフォルト:企業が勧める年金プランは、保守的な投資をデフォルトにしている。しかし、リターンが非常に少ない。加入者は適切なリスクを選べるようにする。

⑤エラーを予期する:面倒くさがりな人には年金プランを自動加入方式にする。また、ほかのプランを追加して資産配分を調整できるようにする。

⑥複雑な選択を体系化;複数のプランの中から、加入者のニーズにあったプランを選べるようにする。

 

ほかに、貯蓄、投資、借金(ローン)、社会保障制度、医療、臓器提供、環境保護、婚姻制度について、どのようなときに、ナッジがあるとよいのか提案しています。

 

この本とそのレビューから

引用元

実践 行動経済学 | リチャード・セイラー, キャス・サンスティーン, 遠藤 真美 |本 | 通販 | Amazon

 

 

いかにして、なぜ人は変わるのか。行動変容の理論

すべての引用元

https://www.jahbs.info/journal/pdf/vol34_1/vol34_1_2.pdf

 

IV.複合的マルチレベルアプローチ:健康行動の変容理論の統合

1.行動変容の過程における共通効果

「いかにして,なぜ人は変わるのか」という命題に対して,これまでいろいろな答えのパズルのピー ス(断片)が導かれてきた。行動変容の過程で共通して生じる非特異的な効果と影響因について,主なものを下記に列挙する

1)自然の変化:特別な働きかけがなくても,人は自発的に変わり得る。医療場面での自然寛解がその例である。

2)ポジティブな期待(希望):行動変容に対して,クライエントはいつでも何らかの予期を持つ。ポジティブな期待は動機づけを高め,望む結果が得られるように行動する 33)。スピリチュアリティ的な癒しの効果 34)とかマインドセットと呼ばれるメタ認知的信念である 35)

3)クライエント-カウンセラーの関係(信頼):心理療法の違いがあっても,その効果の約12%はいずれも治療関係に由来すると言われている 36)。変容の過程における信頼という非特異的要因は,ソーシャルサポートの恩恵的な機能に共通する効果でもある。

4)ホーソン効果:自分に特別な関心が向けられていることで変容が生じる。これは自尊感情の向上に由来すると考えられている。注目を浴びた従業員の生産性が上がったホーソン工場で行われた有名な産業・組織心理学における古典的実験からそう名付けられている。

5)量的効果:変化の程度は一般に,その量と頻度に比例する。薬の用量作用曲線の考え方に匹敵する。

6)短期介入効果:最初のきっかけがあると,何もしない場合と比較して,変化が生じやすい。

7)待機者リスト効果:対照群として介入プログラムの待機者リストになっていると,その期間終了後,遅れてその介入プログラムを始めたとき,プログラムをまったく受けない群と比較して,非常に大きな変容の効果が生じる。

8)変化についての語り:変化の可能性を口にして話すことで,行動変容が生じやすくなる。


2.複合的マルチレベルアプローチ
行動変容を成功させるためには何をすべきか。大切なのは,行動変容は過程であって,結果ではないということの認識である。行動変容の過程において大事なのは,クライエントのニーズに応じて,必要な時に必要なことを必要なだけ,時機よく支援をする医療者のコンピテンス(社会的能力)である。

換言すれば,TTM と社会的認知論と動機づけ面接法などの理論とモデルを
クライエントの問題にいかにうまく “ 適合 ”(matching)させる技量である。

複数の理論の組み合わせは,行動変容に影響する多様な要因を考慮するのに役立つ。

そして,健康行動の変容を複合的マルチレベルアプローチ8,37)で行う。

図1で最初に示したように, 生物心理社会学的モデルに基づいて健康行動の変容を全体的な視野で考え,個人を対象とすることのみならず,家族,地域,職域,社会全体といったレベルからのアプローチを同時並行的に進めていく戦略である。

 

V.新しい行動変容の戦略
これからは,健康行動の変容にとって有効とされている複数の理論の強みと長所を上手に統合し,複合的なマルチレベルから行動変容にアプローチできるかである。
本稿で取り上げた3つの代表的な健康行動の変容理論を活用することの意義をまとめる。
1)それぞれの健康行動理論に示されている行動の変容過程にかかわる要因を確認しながら,効果的に企画や介入プログラムを立案することが可能となり,実施上の問題点と改善点が明らかになる。

2)行動変容の結果のみを指標とするのではなく,それぞれの健康行動理論に基づいて,行動変容の関連要因の変化を含めて綿密な評価が可能になる。

3)行動変容の有用性を確信しているが,具体的にどのような行動変容の戦略と戦術を活用したらよいのか自信がないときのガイドとなる。例えば,

・TTM にしたがって,クライエントの変化のステージを評価することで,ステージに適合した変容の過程を選択できる。

・社会的認知論の利用は,クライエントの行動変容に対する期待と自信を評価できるため,その結果を予測できる。

・動機づけ面接法を用いて,行動変容に対する両価的感情を探りながら,クライエントの自律性を受容する。共感的態度に傾聴することで,動機づけ的考えを引き出せる。

行動科学は,人間行動の普遍性に関する知識を集積し,その考え方を理論化してきた。

しかし近年の行動経済学の考え方によれば,私たちはけっして「合理的な人間」ではなく,認知バイアスから不合理な意思決定をして,理屈通りに行動しない 38)

そこで,行動変容に対する個人の意思決定が時として,合理的に行われない場合があることを前提に, ちょっとした “ 工夫 ” と “ 仕組み ” で,個人がより良い選択をできるように支援する「ナッジ」(nudge) という行動経済学の政策アプローチが注目されている。

 

ナッジとは。

自己効力感を高める要因

バンデューラは、自己効力感の認識に影響を与える要因を4つ挙げている。

・制御体験:「行動を制御することで行動達成されたという経験」のこと。直接の体験として、最も効果的であるとされる。制御体験の失敗はマイナスの影響となる。

・代理経験:他者の行動結果を観察することに伴う体験のこと。観察学習、モデリングのこと。

・言語的説得:成功できると思わさせるような他者の言葉による説得のこと。効果はあるが、経験がなく困難に直面すると急速に消失する。

・生理的情緒的状態:自分の生理的・情動的な状況についての体験的自覚が自己効力の判断の手がかりとなる。緊張や震えなどの生理的反応があると、成功予期が弱まり、自己効力感を感じにくくなる

 

さらに、その後の研究でそれ以外の要因についても報告されている。

・意味づけ:行動に対する意味づけや必要性が、自己効力感を高める

・方略:課題を達成するための方略を知っていて活用できることが自己効力感を高める

・能力への原因帰属:結果に対する原因を努力よりも能力に帰属させる考え方のほうが、自己効力感を高める

・ソーシャルサポート:活用できる社会的資源を多く認識していることが、自己効力感を高める

・健康状態など:高齢者は身体的な衰えが自己効力感を低下させる

 

 

モデリングによる強化についての補足

社会学習理論では、イメージによる強化が成立する。下の3つ。

・外的強化:実際に報酬を得ること、報酬を得られるというイメージによっても強化が成立すること。

・代理強化:モデリングをする他者が報酬を得ることによっても、自分の行動が強化される。

・自己強化:ある基準に自分の行動が達した時、自分で自分に報酬を与えることが強化の役目を果たす。

 

引用元

https://psychologist.x0.com/terms/114.html

相互決定論

相互決定論

バンデューラは、社会的認知理論の中で相互決定主義に立っています。

「行動」「環境」「個人」の3つの要因は、相互に影響を与え合い、互いの決定因子になるという考え方のこと。

 

環境は人の考え方や感じ方に影響を与え、それが行動に影響を与え、環境に影響を与えます。  

個人的要因:

個々のコンポーネントには、過去に取り入れられたすべての特性が含まれています。
性格と認知的要因は、個人の期待、信念、独特の性格特性のすべてを含む、人の行動に重要な影響を与えます。

環境要因:

環境コンポーネントは、行動が発生するコンテキストを指します。
人の物理的環境だけでなく、社会的環境も含まれます。具体的には、人々が存在する(または存在しない)ものと、これらの人々が抱く態度、信念、アイデアです。

行動要因:

相互決定論の概念によれば、人の行動は、認知プロセスや社会的刺激などの環境要因によって影響を受けます。振る舞い自体は、いつでも、または状況によって強化される場合とされない場合があります。

 

例えば、子どもが学校が好きではないために問題行動をしたとします。その結果、教師は子供を叱責し、子供がさらに問題行動を起こす可能性があります。(行動要因)

また、子供がクラスでおしゃべりしていて教師に怒鳴られた場合、それは彼や教師だけでなく、残りの生徒の教室環境にも影響を及ぼします。(環境要因)

 

さらに、恥ずかしがり屋の生徒がいたとします。(個人要因)
学校の初日にクラスに入ると、他の生徒がすでに座っています(前提:環境要因)
恥ずかしがり屋の生徒は、注目の的になることを避けるためにクラスの後ろに座ろうとします(行動要因)

しかし、教室の前に座っているクラスメートが恥ずかしがり屋の生徒に挨拶し、隣に座るように誘います。(環境要因)すると、この新しい強化刺激(フレンドリーな生徒)は、この生徒の通常のルーチンに変化をもたらし、恥ずかしがる行動を変化させます。(行動要因)

 

バンデューラの理論は、行動の観点から、
行動を理解するためのより社会的認知的アプローチへの重要な転換を表しています。

行動主義者は、個人の行動をほぼ完全に形作ったのは環境であると示唆しました。
一方、バンデューラは、個人、行動、環境の間の双方向の関係の重要性を認識しました。

これは、人々が自分の環境で経験することによって確かに影響を受ける一方で、
自分の選択や行動を通じて自分の状況や状況に変化をもたらす力も持っていることを示唆しています。(自己効力感へつながる)

 

引用元

www.mentaloptimum.com

 

PBISと修復的正義

PBISとは

アメリカを中心に進められている「ポジティブな行動介入と支援」を用いた包括的生徒指導アプローチのこと。

 

行動分析学を理論的背景としている。

(行動は交点的に獲得したり変化させたりすることができる)

子どもたちに対して積極的な働きかけを行ったり環境を整備したりすることを通して、適応的行動の増加や問題行動の減少を図る。

 

望ましい行動の獲得や定着を促す取り組み

アメリカ・シカゴ市のフランクCホワイトリー小学校の実践例(2013)から

①目的とアプローチの共有

まず取り組みの目的とアプローチの仕方を全ての教員が共有する。

この取り組みで子どもたちに届けなければならない最も大切なメッセージは「自分は何をしたのか、どんな悪いことをしたのか」ではなく、「どういうことをしなければならないのか」である。

ある状況において自他にとって望ましい行動とは何かに気づかせ、それらを獲得・定着させていくことがこの取り組みの目的となる。

②望ましい行動の明確化

子どもたちには、学校の主要な場所においての期待される望ましい行動が、

思いやる、責任を持つ、安全を保つの3つの観点に沿って具体的な行動レベルで示される。

・Be Respectfull

 思いやりのある言葉で穏やかに話す、全身で相手の話を聴く、ものを大切に扱う

・Be Responsible

 最大限の努力をする、期限までに宿題を仕上げる、自分の身の回りをきれいに保つ

・Be Safe

 いつでも歩く、椅子は机の下に入れる

 

③望ましい行動の教示

何が期待される望ましい行動であるのかについて、年度当初や長期休暇明けに開かれる集会、および毎月の各学級の中で教えていく。

期待の観点と場所のマトリクスからなる行動一覧表を玄関や教室などに掲示し、子供が確認できるように環境整備する。

単に教示するだけでなく、望ましい行動が見られた時にはその行動に対して即座にカードを与えて称賛し、その行動を強化する仕組みを設ける。

カードは教職員が常に携行しているほか、あらゆる場所に置かれており、子供同士で授受できるようになっている。学級あるいは学校全体でご褒美(自由時間や映画鑑賞など)がもらえるような仕組みづくりをする。子どもの望ましい行動をしようとする動機づけを高め、行動を強化する。

さらに、カードの内容を集計し、望ましい行動を誰があまりできていないのか、どんな場所で生起していないのか、どんな行動の観点が足りないのかを把握する。これに基づいて次期の活動の重点を定めることができる。

 

この実践のポイントは、

「してはいけないこと」を伝え、守らせるのではなく、

それぞれの場面で「自他にとって望ましい行動とは何か」に気づかせ

そうした行動を獲得したり定着させたりするという、

子どもの成長を引き出す部分である。

 

 

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修復的正義(Restorative Justice)について

修復的的正義とは、問題が起こった際、関係者(被害者、加害者、家族など)が一緒になって解決を模索すること。

加害者は、被害者との対話などを通じて事故の行為を反省し、責任を取る義務がある。被害者もそれを通じて事故の受けた被害について納得がいくまで考察する。加害者が所属するコミュニティは、加害者の責任を取るチャンスと権利を提供する。

 

反対語は、報復的正義。「からかったA・B・Cが悪い。処罰しろ」という考え方。

こうすると、「Dのせいで怒られた。今度は見つからないようにやってやる」などと行動が陰湿になる可能性がある。また、責任を取るチャンスと権利を失ってしまう。

A・B・C・Dをコミュニティに戻すために、修復的正義を用いて

問題行動で壊れた人間関係を修復することが重要である。

 

修復的正義を取り入れた生徒指導の手順

①関係する全ての生徒を、個別に、複数の教員で、同時に事実確認する

②いつ、どこで、誰が、何をしたのかを確認し、食い違いがある場合は徹底して確認する

③全体像が明らかになったら、関係する生徒を集めて全体像を確認し、その後、修復的正義も含めた指導に入る

(事実確認中には指導を入れない。生徒が状況を話さなくなり、全体像が把握できなくなる)

 ↓ より具体的には

❶何が起こったか、その時何を考えていたか聞く

❷その後、何を感じているか聞く

❸他の誰が影響を受けたか考える:親は、クラスの皆は

❹責任を取る権利について説明する:「このことに責任を取るつもりはあるか?」

❺事態を整理するには何が必要か決める:〜に謝る、保護者に説明するよなど

❻今回とは違う方向に進めるために、何ができるか考える

 

 

PBISは、問題行動自体の減少に寄与する。

修復的正義は、問題が生じた子どもへの対応やコミュニティの回復に寄与する。

 

参考

長江・山崎・中村ら(2013)「米国における包括的アプローチに関する一考察ーPBISの視察から」学校教育実践学研究,19