すり傷の手当て、湿潤療法と外傷性刺青

擦過傷の手当てについてです。

 

基本的な処置は、

流水(水道水で良い)で洗って、傷口を保護する

です。

 

患部を観察して、傷の大きさ、深さ、異物混入の有無を確認し、

悪化するような傷でないか、止血できたかを確認します。

 

 

さらに、この2つについて理解しておく必要があります。

1)湿潤療法について

2)外傷性色素沈着について

 

 

1)湿潤療法について

日本創傷外科学会ではこのように書かれています。

すり傷|一般社団法人 日本創傷外科学会 一般の皆様へ

30年以上前は、キズを乾燥させて治すことが一般的でした。
以前は抗生物質などが少なく、感染対策からこの考えが強かったと思われます。動物実験でキズを湿潤環境で治す方が早く治るという報告がでて以来、キズは湿らせて治そうとする考えが一般的になってきました。この考え方により、先に述べた創傷被覆材が発達しました。

しかし、この考えを誤解して、キズの回りの皮膚がふやけるぐらいまで湿潤にすると、かえって治癒は遅くなります。また感染があるキズを湿潤にすると、感染を悪化させることがあります

このため、感染がある場合には、一旦乾燥させて感染をおちつかせてから湿潤環境にすることもよくあります。基本的にはキズは湿潤環境で治しますが、私たちは「適切な」湿潤環境を考えて治療法を選択しています。

 

(創傷被覆材について)

キズを湿潤環境にすることで治癒を早める材料が多くあります。
創傷被覆材もその一つで、その種類は多くキズの状態で使い分けが必要です。また多くの材料はキズを密閉してしまうので、感染があるキズに用いると感染が悪化することがあります
キズからは滲出液(しんしゅつえき)という水分成分がでますが、キズによって多く出る場合と少ない場合があり、その状態で材料を選択します
滲出液が多くて創傷被覆材の中に液がたまりすぎると、皮膚全体がふやけてしまいキズの治りが遅くなることもあります。
時々一度貼ると1週間くらい貼りっぱなしでよいといわれていることもありますが、当然経過をみながら貼り続けてよいのか、それとも早く交換したほうがよいのかなどを適切に判断する必要があります。

 

傷を乾燥させずに、湿潤環境で治す方が早くきれいに治るという実験結果から

湿らせて治すことが一般的になり、創傷被覆剤が発達しました。

しかし、

・傷口がふやけるくらいまで湿潤にすると、かえって治癒は遅くなること

・感染がある傷を湿潤・密閉状態にすると、感染が悪化してしまうこと

がわかっています。

傷の治りを促す”滲出液”は、傷によっても出方が異なり、それによって被覆剤を選択することが必要です。

 

また、湿潤療法を行うにあたっては

子どもでは難しいので、大人が

患部を経過観察して

・感染がないか(腫れ・膿・痛みがあったりして悪化していないか)確認すること

・感染が見られた場合は、湿潤療法を中断すること

・そもそも、感染させないよう、患部を清潔な状態に保つこと

が必要になります。

 

学校では、一人一人に湿潤療法を行い、傷の治療(経過観察、洗浄等)をすることはできません。(※救急処置でできることの範囲外になります)

なので、養護教諭湿潤療法を自ら施すことはありません。

 

キズパワーパッドは高価なので、コストの問題でもあります)

 

 

ただし、家庭が医療機関から指示を受けるなどして湿潤療法をおこなっている場合は、それに準じて必要な手当てを施すことがあります。(滲出液が漏れ出してしまった場合に、上からガーゼを当てたり)

保護者の方と確認して、子供の健康上必要なことについてはお手伝いしますので

相談していただけたらと思います。

 

こちらも参考に

www.youtube.com

出血がないか、膿が出ていないか、滲出液が少量であるか

この3つの基準を満たせば、キズパワーパッドを使って良いと仰っていました。

これらが満たせていなければ、

ワセリンを塗って患部を保護し、傷の治り具合を確認します。

その後、数日経って基準を満たしていれば、使用できるとのことです。

 

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2)外傷性色素沈着について

 

日本形成外科学会による”擦過傷”についての説明では

外傷とは、その種類|日本形成外科学会

道路や塀などにこすりつけることにより、皮膚がすりむけた状態の創傷です。皮膚の損傷自体は浅く、多くの場合縫合せずに治ります。しかし、創面に微細な土砂、ゴミなどが埋入し、治ったあとも皮膚のなかに残っていしまう場合があります。
この状態を外傷性刺青といい、特にアスファルトなどの黒色の異物は治ったあとがかなり目立ちます。

このように書かれています。

 

外傷性の色素沈着を防ぐためには、患部を十分に洗浄することが大切です。

創の洗浄は、感染防止の上からも極めて重要で、時間をかけて丁寧に行う必要がある。大量の滅菌水生理食塩水、あるいはごく薄いヒビテン水で、ガーゼなどを用いながら創内の異物を十分に洗い流す。

medical.nikkeibp.co.jp

 

保健室で処置する際には

カット綿や大きい綿棒を使っていて

できるだけ綺麗にするようにしています。

 

ただ、子供が処置を嫌がってしまったり、

授業のことなど他に優先しなければならないことで急いでいる時は

十分に洗浄できないこともあります。

その時は、お風呂に入った時に、もう一度きれいに洗ってねと子どもに伝えます。

 

特に注意しているのは、鉛筆の傷です。

鉛筆で擦ると、黒鉛が残ってしまいます。

黒鉛は、粒子が細かいので、跡になりやすいのだそうです。

鉛筆でできた傷は、必ず保護者の方に手紙を書いて、

「色素沈着が気になる場合は、皮膚科をご受診ください」と伝えています。