学級経営〜集団として機能させるために〜2
目次
1 学級を「集団」として機能させるために何が必要か。
2 どのように進めていけばよいのか。 →ここから
集団づくりを難しくしている背景
核家族化、少子化、地域など、子どもを取り巻く環境や遊びの変化などによって、今の子供は多様な人々との関わりを持つ機会を奪われている。それと同時に、他者と関わる力が落ち、他者と関わることで得られる感情体験(自己肯定感や自己効力感など)も少なくなっている。
集団づくりの要件として用いられる理論
三隅(1966):PM理論におけるリーダーシップ行動は、集団に対してどのような働きかけをすべきかの原則を示している。
P=パフォーマンス:集団目標達成行動 ①集団を機能させる仕組みづくり
M=メンテナンス :集団維持行動 ②人間関係づくり
集団にいる時の子供たちの懸念
「受け入れてもらえるかなぁ」人間関係づくりが不足
「みんな何をしようとしているのかなぁ」集団目標が不足
「こんなこと言ったりやったりして大丈夫かなぁ」集団規範が不足
「この中で自分は何をすればいいのかなぁ」集団における役割が定まっていない
先述した背景から、今までと同じやり方では、集団の良さを引き出せなくなっている。そのため、これまで以上に丁寧に集団づくりをしていくことが重要である。
集団づくりの具体的な進め方は、3つに整理される。
その1 関わりの機会を増やす:社会的欲求、成功体験
その2 関わり方を学ばせる:SEL
その3 関わる仕組みを作る:協同学習
具体的な進め方<その1>「関わりの機会を増やす:量・質」
他者との関わりが乏しい今日では、関わることの良さを体験できていないことが多い。年度当初の教師の仕掛けだけでは、機会として不十分となっている。なので、関わりの機会を設けることが重要である。
実践研究:広島県立教育センター(2007)
方法は各学級が取り組みやすいような方法で行っている。
たとえば「朝のミニ会話」は10分間ペアで会話の機会を設ける取り組み。テーマは、「最近楽しかったこと」などの気軽なものからはじめ、徐々に「頑張ったこと」のような自分自身のことを語るテーマに移行している。
小学校:係活動の自由化(に伴う話し合い)、グループ学習、今日のベストフレンド
中学校:ランチトーキング、ペアスピーチ、グループ面接
関わりの機会を増やすためのポイントが2つある。
①社会的欲求の階層性を考慮する
以前述べた社会的欲求理論には、3つの階層(順序)性が想定されている。
・交流欲求 誰かと繋がって居場所を作り安心感を得たい・・これが基盤となる
↓
・承認欲求 周りの人から認められることで自己肯定感を得たい
↓
・影響力欲求 周りの人に何らかの影響を及ぼすことで自己効力感を得たい
同じ取り組みであっても、どの欲求を満たす活動になっているのか重点を意識し、順次その重点を移行させていくことが大切になる。
②関わりを通した成功体験を積ませる
誰かと関わることで楽しかった、何かをやり遂げた(達成感)、他の人の役に立った(自己効力感)を体験させること。
成功体験がないと、関わることで恥ずかしい思いをした、嫌だった、気を遣って煩わしいだけだ、という思いが先立ってしまう。
したがって、まずは、「関わって楽しかった」と思えるような取り組みを導入し、他者と関わることの抵抗感を低くすることが大切。その上で、誰かと共同して成し遂げる(達成感)、誰かの役に立つ(自己効力感)を体感させられるような取り組みへつないでいく。
これらを通して、社会的欲求の3つを満たすような経験を積ませていく。
具体的な進め方 <その2>「関わり方を学ばせる:スキル」
*社会性と情動の学習(SEL:social and emotional learning)を行う。
これによって、他者と関わる行動だけでなく、情動の理解・表出・調整を学ばせることができる。
具体的な進め方 <その3>「関わる仕組みを作る:場の提供」
*協同学習(授業における集団活動)を行う。
これによって、集団を機能させる仕組み=「目標、規範、役割を明確にする」を効果的に進めることができる。
2と3は長くなるので別で解説する。